こどもの病気の基礎知識

RSウイルス感染症

RSウイルスとは、人に感染して呼吸器症状を引き起こすウイルスです。
通常、冬を中心に流行しますが、近年、流行が前倒しになっていると言われ、今年は特に夏に流行がはじまり話題になりました。

1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%のお子さんが感染し、感染のたびに風邪症状を引き起こします。

感染後4〜5日の潜伏期の後、鼻汁・咳・発熱などの症状が現れ、3割程度のお子さんはそのあと細気管支炎などを発症し、咳、喘鳴(ぜいぜいする)、呼吸が早くなるなどの症状が現れます。1歳までの乳児や、出生体重が小さかったお子さん、心臓や肺に病気をお持ちのお子さんは重症化しやすいので注意が必要です。

根本的な治療はありませんが、多くの場合、喘鳴を伴う咳に対しては内服薬、必要な場合は吸入、酸素投与など、それぞれの症状に応じた治療がおこなわれます。ご家庭では加湿や水分補給に努めましょう。

インフルエンザ

インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症です。
38°C以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が急に現れ、感染力も強いのが特徴です。日本では毎年11月〜翌年4月に流行がみられます。

基本的には風邪と同様に自然に治る病気です。インフルエンザを発症しても、感染初期は検査で陰性になることがありますので、発熱後すぐに受診しても診断がつかないことがしばしばあります。ただし、呼吸が苦しい、意識がおかしい状態が続く、けいれんが起こるなどの症状がある場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

治療は抗インフルエンザ薬で、現在、外来で利用可能なのは、内服薬ではタミフル、吸入薬ではリレンザ、イナビルです。いずれもインフルエンザが感染した細胞から出て広がるのを防ぐ薬ですので、発症から48時間以内の投与が勧められています。

インフルエンザと診断されたら、自宅で安静にし、処方された薬を指示通り使いましょう。また栄養と十分な睡眠をとり、水分補給や部屋の加湿につとめましょう。

熱が下がっても、他の人に感染する力はあります。出席停止期間は『発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで』となっていますので、ご注意ください。

ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルスなど)

ウイルス性胃腸炎は、ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスなど様々なウイルスが原因となります。
主な症状はいずれも嘔吐や下痢で、発熱することもあります。

ウイルスに対する治療薬はないため原因ウイルスを特定することにはあまり意味はなく、検査のためだけに医療機関を受診する必要はありません。

予防が大切ですので、手をしっかり洗って手に付いたウイルスを減らし、手袋を使って直接吐物や下痢に触れないようにしましょう。ウイルス性胃腸炎は感染力が強く、手などについたわずかなウイルスだけでも感染を広げてしまうからです。

ウイルス性胃腸炎にかかってしまった場合は、嘔吐や下痢が続き脱水が進行することで重症化します。
そのため脱水が進行する前に、嘔吐や下痢がみられた時点で、自宅で経口補水療法を始めることが大切です。重症化する前の脱水に対して、経口補水療法には点滴と同等の効果があります。経口補水療法は、経口補水液(オーエスワンなど、水分・塩分・糖分が一定の割合で含まれる飲料)を、ペットボトルのキャップ1杯程度の5mlを5分おきに飲み、嘔吐がなければ少しずつペースアップします。決して一気飲みせず、少しずつ頻繁に飲むことがポイントです。もし嘔吐や下痢を発症したときには、試してみてください。

気管支ぜんそく

気管支ぜんそくは、肺と口をつなぐ空気の通り道である気管支に、アレルギーなどで慢性的に炎症が起こる病気です。
季節の変わり目や、風邪、ホコリや動物の毛などの様々な刺激で発作が起こると、気管支の壁がはれ、痰(たん)が出て呼吸が苦しくなり、ひどくなると入院が必要となります。空気の通り道が細くなるので、ヒューヒューと笛のような音がしたり、痰(たん)があってゼイゼイと音がしたりします。

治療には起こった発作を改善する薬と発作を予防する薬があります。発作を改善する薬は気管を広げる薬ですが、それだけでは炎症を抑える力はありません。

炎症を抑えて発作を予防する薬の代表は吸入ステロイド薬です。ステロイドと聞くと抵抗を感じる方も多いと思いますが、吸入ステロイド薬の登場により、ぜんそくによって亡くなる方は劇的に減少しました。副作用も内服薬に比べるとかなり少なくなっています。発作が軽くても、回数が多い場合は予防薬の適応があるかもしれませんので、かかりつけ医に相談しましょう。

ご家庭でできる予防法は?

原因物質の除去や適度の運動が挙げられます。特にアレルギー体質のあるお子様は、原因物質として予想されるダニ、ホコリなど、除去できるものはなるべく除去しましょう。また、タバコも発作の原因となりますので控えましょう。
運動は発作を誘発する場合もありますが、子どもの成長発達に様々な利益がありますので、かかりつけ医と相談して行いましょう。有酸素運動、特に水泳や歩行が推奨されています。
ぜんそく診療の目標は普通の子どもと同じ生活を送ることです。ご家庭と医師とで協力し合って、子どもの成長をサポートしましょう。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

今年の8月、国立感染症研究所は、“人食いバクテリア”とも呼ばれ、手足のえ死を引き起こし死に至ることもある「劇症型溶血性レンサ球菌(溶連菌)感染症」の患者数が、過去最多になっていることを発表しました。

溶連菌感染による一般的な疾患は咽頭炎であり、その多くは小児が罹患します。

一方、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、菌がノドや手足の傷口から血液内に侵入して劇症型(発病後、短時間のうちに症状が進むこと)になります。子供から大人まで広範囲の年齢層に発症しますが、特に30歳以上の大人に多いのが特徴です。免疫不全などの持病をほとんど持っていないにもかかわらず、突然発病する例が多いとされています。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内にはショック状態から死に至ることもあります。最も一般的な初期症状は手足の激痛および発熱ですが、激痛の前に、悪寒、筋肉痛、下痢のようなインフルエンザ様の症状や錯乱など意識障害がみられることもあります。

治療は抗菌薬による治療を含めた集中治療が行われます。

筋膜(※)に炎症がある場合は、切除し感染の拡大を防ぎます。早期に治療を開始することが重要です。
傷を清潔に保ち、発熱に伴って、手足の痛みや、創部(皮膚にできた傷跡)の発赤やはれ、痛みなど、感染の兆候が見られた場合には、直ちに医療機関を受診しましょう。

※筋膜:筋肉だけを包む膜ではなく、骨・内臓器官・血管・神経など身体のあらゆる構成要素を包み込み、それぞれの場所に適正に位置するよう支えているもの。

こどもの発熱

お子さまが夜中に高熱を出して慌ててしまうことがありませんか?

熱に気づいたらまず子どもの状態をよく観察しましょう。熱が高くても顔色が良く、呼吸も普通で食欲もある場合は、受診は翌日まで待っても大丈夫でしょう。

解熱剤があれば使っても構いませんが、熱が38度台で元気もある場合は、無理に下げる必要はありません。また「高熱は脳に影響を及ぼすのでは?」と不安に思われるかもしれませんが、体温が41度を超えるまではまず影響ないと言われていますので、あわてる必要はありません。

ただし、以下のような場合はなるべく早く医療機関を受診してください。

・生後3か月未満の赤ちゃんが38度以上の熱を出したとき

・頭痛、嘔吐を伴うとき

・顔色が悪く、苦しそうなとき

・グッタリしているとき

熱の出始めの対処法は?

熱の出始めは悪寒がしますが、このとき体は体温を上げようとしていますので、悪寒がするときはまずお子さまの体を温めてあげてください。熱が上がり切ったら、熱がこもらないように薄着にさせましょう。また、発熱時は体力を消耗しやすいので、体を拭いてあげて熱を逃がしたり、水分補給をしっかりしてあげて、なるべくお子さまが快適に過ごせるようにしてあげましょう。
医療機関を受診する際には、熱の経過(いつから出ているか?何度ぐらい出ているか?何日間続いているか?)や、他の症状(咳や鼻水の有無、うんちの状態など)を医師に伝えることも大切です。

子どもの予防接種〜新型コロナ流行のなかで〜

冬を迎え、新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)に関する新しい情報が毎日報道されています。小児の 新型コロナ感染症は、成人と比べて軽症で、ほとんどの場合は経過観察または対症療法で良くなることがわ かってきましたが、お子さんも感染するのではないかと不安になる方も多いかと思います。

子どもについては、新型コロナ感染に伴う環境変化に伴う心身の不調だけでなく、感染を恐れて必要な予防接種・健診を控えてしまうことがむしろ問題になっています。実際に、首都圏など一部地域の調査で、乳児期(0〜1歳)に受ける予防接種者数はほとんど減っていませんでしたが、1歳以降に受ける予防接種者数が減少していることがわかりました。具体的には、1歳で受ける麻疹・風疹ワクチン第1期、水痘ワクチンや、3歳以降で受ける日本脳炎ワクチン、年長(小学校入学前の学年)で受ける麻疹・風疹ワクチン第2期などで、どれも子どもにとっては新型コロナよりも重症化する可能性が高い感染症の予防接種です。

そのように考えた時に、子どもの予防接種は不要不急として差し控えるべきものではなく、推奨されている年齢で予定通り接種することが重要です。

手足口病(てあしくちびょう)

手足口病(てあしくちびょう)はその名の通り、手・足および口の中に水疱性の発疹が出るウイルス感染症です。
いわゆる夏カゼの一種で主に夏に流行しますが、春や秋にも見られます。

発疹は、水ぼうそうとは違いやや硬く破れにくく、手のひらや足の裏に出来ることが多いです。口の中にできた発疹は口内炎となり痛みを伴うため、食欲が落ちたり、水分を取れなくなる場合があるので、注意が必要です。

発熱は39°C近くの高熱が出る場合がありますが、熱が出ない場合もあります。また、嘔吐・下痢といった胃腸炎を起こすこともあります。ごくまれに髄膜炎や脳炎、心筋炎を起こすことがあります。

ウイルスの感染経路は、飛沫感染、接触感染、糞口感染(排泄された便の中のウイルスが口から入って感染すること)です。
発症までの潜伏期間は3〜5日で、発熱は1〜3日、発疹は3日〜1週間ほどで自然に治ります。しかし症状が治まった後も、ウイルスは感染した子どもの便から排出され続けるため、長期の出席停止が有効な感染対策とはならないことから、出席停止期間は定められていません。

一般的な感染対策は、手洗いを流水と石けんでしっかりとすること、排泄物を適切に処理することです。タオルも共用してはいけません。

有効なワクチンはなく、発病を予防できる薬もありません

治療は対症療法のみとなります。痛みや発熱があれば解熱鎮痛薬を服用し、嘔吐や脱水があれば吐き気止めを服用したり、点滴をします。発疹に対しては特に軟膏などは必要ありません。
ただし、発熱が2日以上続く、嘔吐する、頭を痛がる、視線が合わない、呼びかけに応じない、呼吸が速く息苦しそう、水分を取れずおしっこが出ない、グッタリとしているなどの症状が見られた場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。

てんかん

皆さん、「てんかん」という病気をご存知でしょうか?
てんかんとは、けいれん発作を繰り返す脳の病気で、脳の神経細胞に電気的な興奮が突然発生することにより、手足に力が入ったり意識がなくなったりするなど、その人それぞれの症状が出現します。

てんかんは決して珍しい病気ではなく100人に1人ぐらいの人が持っており、赤ちゃんからお年寄りまでいろいろな時期に発症しますが、子どもは最も発症しやすい時期の一つです。家族には、てんかんがないことが大半で、原因ははっきりしないことが多いです。発作がなかなか落ち着かない場合もありますが、多くの場合は、毎日の内服のお薬で発作が全くなくなり日常生活を通常通りに送ることができます(車の運転も条件を満たせば可能です)。
また成長するにしたがって自然に良くなることがあり、その場合はお薬を中止することができます。

てんかんのけいれん発作は数分以内に治まることが多いため、もしけいれん発作に対応する必要がある場合は、その人を安全な場所に横向きに寝かせ(けいれんで嘔吐することがあり、その場合に吐物を喉に詰めることがあるため)、けいれんの様子をよく観察してください(医療機関で治療方針を決めるのにとても大事な情報になります)。けいれんがすぐに治まらない時は救急車で最寄りの医療機関への搬送が必要になります。

とびひ(伝染性膿痂疹)

子どもには、初夏から夏にかけて、あせも・虫刺されができやすくなりますが、それにともなって“とびひ”にもかかりやすくなります。

“とびひ”は正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」といい、体の一部にできた水ぶくれが、他に次々に移っていく皮膚の病気です。その拡がる様子が「家事の飛び火」のようであることから、“とびひ”の通称で呼ばれています。

“とびひ”のきっかけは、あせも・虫刺されだけでなく、すり傷などもあり、皮膚のバリアが弱くなったところにブドウ球菌が感染し、水ぶくれとなります。水ぶくれはすぐに破れ、その周囲が赤くなって拡がっていきます。また、かゆみが強いので掻きむしってさらに拡がることになります。

“とびひ”を予防するには皮膚を清潔にすることが大切で、特に夏場は入浴することが効果的です。また鼻孔は原因となるブドウ球菌が常在していることが多く、鼻を触った手から他の部分に菌が移って“とびひ”になることも多いため、鼻を触らないこと、それから手洗いをすることが大事ですし、皮膚を傷つけないために爪を短く切ることも有効です。

治療は、症状がごく軽い場合は塗り薬だけのこともありますが、抗生物質やかゆみ止めの内服が必要になることもあるので、早めに小児科または皮膚科を受診しましょう。

熱性けいれん

熱性けいれんは、38度以上の熱がある時に起こるけいれんで、他に発作の原因(脳炎、脳症、代謝異常など)がない場合というのが定義です。

多くは6ヶ月から5歳頃までの子どもで、10〜15人に1人が経験します。

通常は5分未満の短いけいれんで、脳に障害を残すことはありません。7割が1回限りで、残りの3割も5〜6歳頃までに起こさなくなります。また家族の中に熱性けいれんの人がいる場合がよくあります。

原因となる感染症としては、インフルエンザA型、エンテロウイルス(ヘルパンギーナなど)、突発性発疹があげられます。

けいれんの症状は、突然意識を失い、一点を見つめたり、白目をむいたり、息が止まって唇が紫色になったりします(チアノーゼ)。また、手足をピンと伸ばしたり、体をがくがく震わせたりします。

けいれんを起こしたら、まず平らな場所に寝かせて、呼吸が楽にできるようにしましょう。

口の中には指や物を入れないで下さい。嘔吐した場合には、顔と体を右に向け、吐しゃ物で窒息しないように注意が必要です。

また同時に、けいれんの様子を確認してください(持続時間、左右差、チアノーゼなど)。

もし、けいれんが5分以上続く場合は救急車を呼びましょう。意識がおかしい時、意識が戻らない時、1回の発熱でけいれんを2回以上起こした時、けいれんに左右差がある時なども、すぐに救急病院を受診しましょう。

けいれんを繰り返す人や、持続時間が長かった人には、発熱時に早めにけいれん予防の薬を使うこともありますので、かかりつけ医に相談しましょう。

片頭痛

大人でみられるイメージがある片頭痛ですが、実は子どもにも多いことがわかっており、世界各国の調査では、小児の3.8 – 13.5%が頭痛を起こすとされています。片頭痛とは、頭の片側を中心に、ズキンズキンと脈打つように起こる頭痛のことです。頭痛の前に「ギザギザした光が見える」などの前兆をともなうことや、頭痛がひどい場合に嘔吐を引き起こすこともあります。子どもの片頭痛は、頭の両側が痛い、前兆が見られにくいなどの傾向があり、大人のものとは少し特徴が違うようです。

片頭痛が起こるきっかけは、寝不足や気候の変化、疲労やストレスなどさまざまです。頭痛を起こす原因となる病気が隠れている場合もあるため、頭痛が続く、あるいは強い頭痛があるときは、医療機関へ相談しましょう。

子どもの片頭痛においては、規則的な睡眠、食事、運動が治療の基本となります。内服治療としては頭痛が起きた際に内服する鎮痛薬のほかに、日常生活に支障が出るほどの頭痛に対しては予防薬を内服する場合もあります。

マイコプラズマ

マイコプラズマ肺炎をご存じですか?
マイコプラズマ肺炎とは患者さんの咳などにより、肺炎マイコプラズマという病原体に感染しておこる病気です。

この病気は、子どもたちのうちでも年長児から学童にかけて見られることが多いですが、幼小児期においても肺炎までいたらない「マイコプラズマ感染症」は稀ではありません。感染してから2〜3週間後、頭痛・倦怠感・発熱・咽頭痛・咳などの症状が出現します。この病気に特徴的な症状というものはなく、あえて言うならば鼻水や痰などがほとんど目立たないことが通常の風邪との違いとも言えます。胸部レントゲンで明らかな肺炎の影が認められても、全身状態が良くかなり元気で活動的な場合も少なくありません。「肺炎」と聞くと「ぐったりする」「危険な状態」などのイメージがあるかもしれませんが、マイコプラズマ肺炎は基本的には「元気な肺炎」であることがほとんどであり、3週間ほどで自然治癒します。

マクロライド系の抗生物質が効きにくい耐性菌も増えてきていますが、それによる重症例が増えている傾向はみられていませんので、必要以上に心配することはありません。しかし、時には重症化することもありますので、かかりつけの先生にご相談されるのがよいでしょう。

麻疹(はしか)

麻疹は“はしか”とも呼ばれ、麻疹ウイルスの感染によっておこる感染症です。
典型的な経過では、感染後10〜12日間の潜伏期を経て、38°C前後の発熱や咳・鼻水・目やになど風邪のような症状が出てから2〜3日後に、39°C以上の高熱と、顔や首に発疹がでて全身に広がります。合併症として肺炎、中耳炎、脳炎、心筋炎などがあります。発症してすぐの、風邪のような症状の期間が、感染力が最も強い時期となっていて、麻疹であると気づかずに外出してしまうことが感染を広げる原因となります。

麻疹を発症した場合、いまだに確実な治療法はありません。主治医の指示に従い、休養を取ります。出席停止期間は、『解熱した後3日を経過するまで』となっています。

麻疹は空気感染する感染症ですので、マスク装着で感染を防ぐことは困難です。麻疹の感染発症を防ぐ最も有効な手段は、あらかじめワクチンを接種して麻疹に対する免疫を獲得しておくことです。

麻疹の予防接種は、年代によって制度が変わってきた経緯があります。現在、子どもはMR(麻疹・風疹)ワクチンの定期接種を受けることになっています。
MRワクチンは、1歳の誕生日から2歳になる直前までに1回目、小学校入学前の1年間に2回目を受けます。2回受けることで免疫獲得がより確実になりますので、母子手帳を確かめてみましょう。

水ぼうそう

水ぼうそうは水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症です。感染した子どもから空気中にウイルスが飛び散り、感染が広がります。潜伏期間は2週間ほどで、虫さされのような赤く小さい盛り上がった発疹ができ、水がたまり水疱になります。

発疹は数日で全身に広がり、頭皮にもできるのが特徴です。かゆみを伴うので、ひっかいて“とびひ”になると跡が残ります。発熱には個人差があり、まれに肺炎、脳炎、血管炎などの重篤な合併症が起こる場合もあります。

また、妊婦・乳児・免疫抑制状態にある児などは重症化する場合があり、特に出産予定日まで5日以内の妊婦が発症するとお腹の赤ちゃんが亡くなることもあります。

治療には抗ウイルス薬の投与と皮膚のケアがあります。抗ウイルス薬は発疹が出て2日以内に飲むと症状が軽くなります。基本的には1週間程度で自然治癒しますので、健康な小児全員への抗ウイルス薬投与は勧められていませんが、基礎疾患のある児や免疫抑制状態にある児には点滴での投与が必要となる場合があります。

また、とびひにならないように軟膏などで皮膚のケアを行います。水ぼうそうは学校伝染病に指定されており、発疹がすべてかさぶたになるまでは登園・登校が禁止されています。

予防するには?

水痘ワクチンは、日本で開発された副作用の少ない安全なワクチンです。1回の接種でも重症化は予防できますが、感染予防には2回接種が推奨されています。日本では長らく任意接種でしたが、平成26年10月より、定期接種化され無料となります。1、2才が対象で2回接種です。3、4才は今年度のみ暫定的に1回受けられます。(既に任意接種で受けた方は対象外、5才以上の接種は自費)
詳しくはかかりつけ医にご相談下さい。移ると重症化する場合もありますので、ワクチンで防げる病気は予防に努めましょう。(※妊娠の可能性のある方にはワクチン接種はできません。)